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~第二十二話⑮~ 再び姿を現した朝井うさ子だよ~

Penulis: 倉橋
last update Terakhir Diperbarui: 2025-12-04 04:16:16

 そして空地では、信じられない光景が広がっていた。広場を占領していたムーン・ラット・キッスの巨大な姿がいつのまにか消えていた。

 この光景を見つめていた悠馬の母親の芽衣と荒川先生は顔を見合わせた。

 芽衣が思い出したようにスマホを取り出す。

「しまった。撮影するのを忘れていた」

 悔しそうに唇を噛む。

 空地の地面にも変化があった。犬たちの血肉や骨が一瞬で見えなくなっていた。

 ムーン・ラット・キッス出現の証拠は、この空地からは完全に消滅したのである。少し離れたところでは、春樹や龍たちがみじめな様子で座り込んでいる。

「村雨社長の息子さんね」

 芽衣が笑顔を向けた。

「私、朝井芽衣。あなたがたのお祖父さまには、仲よくさせて頂いているの。大変光栄に思っています。あなたがたのお父さんにもお会いしたことがあります。」

 春樹の顔色が真っ青になった。悠馬の母親が天文学者であることは知っていたが、祖父の知り合いとは全く知らなかったのである。祖父が設立した「ハピー」のホームページをきちんと見ていなかった結果が訪れようとしていた。

 春樹も龍は全てを悟った。うさ子の言葉を全て思い出したのである。

 うさ子は、祖父や悠馬の母に春樹と龍の暴走を止めさせようとしていたのだ。

 哀れな兄弟の目に、見覚えのある車が見えた。父と祖父を乗せた車が空地に入ってきたのだ。そしてその後からは、二台のパトカーと、二台のバン・パトカー。

「悠くんのお母さん、荒川先生」

 飛鳥が声をかけてくる。すぐにふたりの前に立つ。

「悠くんはどこへ? 私、悠くんのことが心配で。元はといえば、私が村雨くんたちに嫌がらせをされたのが原因なんです」

 母親と先生の前なのに、思わず「悠くん」と叫んでいた。芽衣と荒川先生は顔を見合わせ、やがて苦笑いをした。飛鳥の表情には悠馬を心配している様子が、心から表われていた。荒川先生は、思わず飛鳥に駆け寄り。両手を握っていた。

「きっと大丈夫。あなたがいるんだから」

 飛鳥は頬を赤らめた。

「お嬢さん、悠ちゃんはここ」

 聞き覚えのある声がした。

 振り返ると、朝井うさ子が悠馬をお姫様抱っこして立っていた。うさ子が悠馬をそっと地面に立たせる。

「遠山さん、心配させてごめんなさい。僕のために、色々とご迷惑をかけました。それにお母さんや荒川先生まで、本当にご心配かけました」

 悠馬は頭を下
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     そして空地では、信じられない光景が広がっていた。広場を占領していたムーン・ラット・キッスの巨大な姿がいつのまにか消えていた。 この光景を見つめていた悠馬の母親の芽衣と荒川先生は顔を見合わせた。 芽衣が思い出したようにスマホを取り出す。「しまった。撮影するのを忘れていた」 悔しそうに唇を噛む。 空地の地面にも変化があった。犬たちの血肉や骨が一瞬で見えなくなっていた。 ムーン・ラット・キッス出現の証拠は、この空地からは完全に消滅したのである。少し離れたところでは、春樹や龍たちがみじめな様子で座り込んでいる。「村雨社長の息子さんね」 芽衣が笑顔を向けた。「私、朝井芽衣。あなたがたのお祖父さまには、仲よくさせて頂いているの。大変光栄に思っています。あなたがたのお父さんにもお会いしたことがあります。」 春樹の顔色が真っ青になった。悠馬の母親が天文学者であることは知っていたが、祖父の知り合いとは全く知らなかったのである。祖父が設立した「ハピー」のホームページをきちんと見ていなかった結果が訪れようとしていた。 春樹も龍は全てを悟った。うさ子の言葉を全て思い出したのである。 うさ子は、祖父や悠馬の母に春樹と龍の暴走を止めさせようとしていたのだ。 哀れな兄弟の目に、見覚えのある車が見えた。父と祖父を乗せた車が空地に入ってきたのだ。そしてその後からは、二台のパトカーと、二台のバン・パトカー。「悠くんのお母さん、荒川先生」 飛鳥が声をかけてくる。すぐにふたりの前に立つ。「悠くんはどこへ? 私、悠くんのことが心配で。元はといえば、私が村雨くんたちに嫌がらせをされたのが原因なんです」 母親と先生の前なのに、思わず「悠くん」と叫んでいた。芽衣と荒川先生は顔を見合わせ、やがて苦笑いをした。飛鳥の表情には悠馬を心配している様子が、心から表われていた。荒川先生は、思わず飛鳥に駆け寄り。両手を握っていた。「きっと大丈夫。あなたがいるんだから」 飛鳥は頬を赤らめた。「お嬢さん、悠ちゃんはここ」 聞き覚えのある声がした。 振り返ると、朝井うさ子が悠馬をお姫様抱っこして立っていた。うさ子が悠馬をそっと地面に立たせる。「遠山さん、心配させてごめんなさい。僕のために、色々とご迷惑をかけました。それにお母さんや荒川先生まで、本当にご心配かけました」 悠馬は頭を下

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